2019年

2019年11月27日

【共同発表】非培養自己ヒト皮下脂肪組織由来再生(幹)細胞を用いた男性腹圧性尿失禁治療 に関する国内治験の終了に関するお知らせ

名古屋大学医学部附属病院とサイトリ・セラピューティクス株式会社は、2015年2月に医師主導治験1(以下「本治験」)の実施に係る契約を締結し、非培養自己ヒト皮下脂肪組織由来再生(幹)細胞(Adipose-derived regenerative cells、以下「ADRCs」)を用いた男性腹圧性尿失禁の治療2を目的として、独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)を経由して、厚生労働大臣に治験計画届の提出を行い、2015年9月より、本治験を開始しております。

名古屋大学医学部附属病院泌尿器科の後藤百万教授を治験調整医師として、金沢大学附属病院、信州大学医学部附属病院、獨協医科大学病院との多施設共同治験を、名古屋大学医学部附属病院先端医療開発部の支援のもと、男性腹圧性尿失禁の患者に対して、日本で初めて非培養自己ヒトADRCsを用いた再生医療の医師主導治験を実施してきました。サイトリ・セラピューティクス株式会社が開発したセルーション遠心分離機とセルセラピーキットを用いて分離されたADRCs3を、腹圧性尿失禁に罹患している男性患者に投与し、有効性及び安全性を52週間評価した多施設共同治験を実施してまいりました。

このたび、治験を終了し、その結果等を取りまとめた総括報告書が完成しました。尿失禁量が中等度以下で、行動療法及び薬物療法が無効又は効果不十分、あるいは薬物療法が実施困難で、術後1年以上継続する男性の腹圧性尿失禁患者において、皮下脂肪組織から分離されたヒトADRCsを経尿道的内視鏡下で単回傍尿道周囲へ投与した時の有効性及び安全性を確認したところ、安全性は許容可能で、有効性については、予め設定していた基準を達成致しました。

名古屋大学医学部附属病院とサイトリ・セラピューティクス株式会社としては、ADRCsを用いた男性腹圧性尿失禁の再生医療の治験で有効性及び安全性が示されたことから、今後速やかに、サイトリ・セラピューティクス株式会社が開発したセルーション遠心分離機とセルセラピーキットを医療機器として、製造販売承認申請の準備に取り掛かる予定で、来年には本治療の保険収載を目指してまいります。

今後とも日本泌尿器科学会、日本排尿機能学会等とも協力しながら、腹圧性尿失禁患者の皆様への更なる貢献を目指すと共に、非培養自己ヒト脂肪組織由来再生(幹)細胞を用いた再生医療の発展を目指してまいります。

※1 実施した医師主導治験

本治験では、尿失禁量が中等度以下で、行動療法及び薬物療法が無効又は効果不十分、あるいは薬物療法が実施困難で、術後1年以上継続する腹圧性尿失禁に罹患している男性患者を対象としました。患者自身から採取した皮下脂肪組織から、サイトリ・セラピューティクス株式会社が開発した細胞分離装置である治験機器を用いて分離された皮下脂肪組織由来再生(幹)細胞を投与した後、有効性及び安全性を評価しました。

なお、本治験は、厚生労働科学研究費補助金(難病・がん等の疾患分野の医療の実用化研究事業、医療技術実用化総合研究事業及び早期探索的・国際水準臨床研究事業)、日本医療研究開発機構の早期探索的・国際水準臨床研究事業及び再生医療実用化研究事業、並びに名古屋大学医学部附属病院先端研究支援経費の支援を受け、実施しました。

参照: BMC Urol. 17(1): 89, 2017(UMIN試験ID:UMIN000017901、ClinicalTrials.gov Identifier:NCT02529865)

※2 皮下脂肪組織由来再生(幹)細胞を用いた腹圧性尿失禁治療

非培養自己ヒト脂肪組織由来再生(幹)細胞を用いることで、体外培養を必要とせず、皮下脂肪吸引から得た再生細胞の経尿道的注入を3時間程度の一連の操作で行うことから、安全で低襲侵な再生治療と考えられます。麻酔下に250mL程度の皮下脂肪吸引を行い、吸引脂肪組織からサイトリ・セラピューティクス株式会社のセルーションシステムを用いて脂肪由来再生(幹)細胞(ADRCs)を抽出し、これを経尿道的内視鏡下に注入します。ADRCsの注入は、ADRCs単独の外尿道括約筋部への注入、並びに脂肪組織とADRCs混合の尿道括約筋部粘膜下注入として実施します。脂肪吸引、ADSCs抽出、尿道注入までを約3時間程度の一連の操作で実施することができます。

参照: 名古屋大学HP
(https://www.med.nagoya-u.ac.jp/uro08/advanced/regenerative-therapy/index.html)

※3 セルーション遠心分離機とセルセラピーキットを用いて分離されたADRCs

サイトリ・セラピューティクス株式会社の特許技術のプラットフォームであるセルーションシステムは、抽出されるADRCsを用い、非培養の細胞を抽出したその日のうちに患者に投与する治療方法です。
脂肪組織内にある幹細胞は、骨髄に含まれる幹細胞と比べて2,500倍もの量が含まれていることが、さまざまな研究により実証されています1, 2, 3。さらに、皮下脂肪は骨髄よりも低侵襲で採取しやすく、少量の脂肪吸引で細胞を採取することが可能です4
サイトリ・セラピューティクス株式会社の技術では、成人患者ご自身の脂肪組織のみを用いてADRCsを調製するため、この細胞を用いた治療では、拒絶反応や疾患の伝播など、移植の際に起こりうる一般的な問題を回避することができ、拒絶反応抑制剤や免疫抑制剤を用いる必要がありません。細胞培養をすることなく、脂肪組織に自然に存在するすべての幹細胞を含む再生細胞を、人工的な操作を加えずに使用します。完全に自動化された、機能的閉鎖型のシステムで処理され、ADRCsは新鮮な状態で分離されリアルタイムで使用するため、細胞が持つ本来の機能を維持していると考えられます。

  1. Caplan AI. Why are MSCs therapeutic? New data: new insight. J Pathol. 2009 Jan;217(2):318-24.
  2. Fraser J, Wulur I, Alfonso Z, Zhu M, Wheeler E. Differences in stem and progenitor cell yield in different subcutaneous adipose tissue depots. Cytotherapy. 2007;9(5):459-67.
  3. Jurgens WJ, Oedayrajsingh-Varma MJ, Helder MN, Zandiehdoulabi B, Schouten TE, Kuik DJ, Ritt MJ, van Milligen FJ. Effect of tissue-harvesting site on yield of stem cells derived from adipose tissue: implications for cell-based therapies. Cell Tissue Res. 2008 Jun;332(3):415-26.
  4. Fraser JK, Wulur I, Alfonso Z, Hedrick MH. Fat tissue: an underappreciated source of stem cells for biotechnology. Trends Biotechnol. 2006 Apr;24(4):150-4.

リリース全文(日本語版)

リリース全文(英語版)